ADHDは短期記憶に影響を与えるか?
短期記憶が弱い人の中には、もともとADHDの傾向がある人もいるようです。ADHDとは「自己コントロールが苦手な症状」のこと。症状が著しくなると、社会生活に支障をきたすこともあります。ここでは、ADHDと記憶力との関係を中心に詳しく解説していきます。
ADHDと記憶の関係
ADHDとは
ADHDとは、簡単に言えば「自分をコントロールする力が弱い状態」のこと。どんな人でも自分を厳しく律することは難しいものですが、このコントロール能力が著しく弱いために、日常生活に支障をきたしている状態のことをADHDと言います。
具体的な症状にはさまざまなものがありますが、大別すれば「不注意」「多動性」「衝動性」の3つがADHDの主要な症状とされています。
- 不注意…集中力が持続せず、気が散りやすい状態
- 多動性…じっとしていることが苦手で、つい動き出してしまう状態
- 衝動性…よく考えずに行動が先に出てしまう状態
ADHDの原因は、脳の前頭前野の働きや、遺伝的要素、心理社会的な要素など。これら要素が複合的に重なり、ADHDが発症すると考えられています。家庭での「しつけ」が原因で発症するものではないことに注意してください。
ADHDと記憶力の関係
ADHDが記憶力を直接的に障害することは、通常、ありません。むしろADHDの人の中には天才肌と呼ばれる人もいるくらいなので、ADHDと記憶力・能力全般との間に関連性を見出すことは、無理があるでしょう。
その一方で、ADHD特有の症状の影響で、結果として記憶することが苦手な状態に陥る例も見られます。すなわち、ADHDが間接的に絡んで記憶障害と同様の症状を起こすことがある、ということです。
以下、「不注意」「多動性」「衝動性」の3つの症状に分け、それぞれにおける記憶力との関連について考察してみましょう。
ADHDにおける「不注意」と記憶力
核となる症状
- 1つのことに集中できない。あるいは、集中しても持続しない。
- 周囲の刺激に過敏に反応する。結果、気がそれやすくなる。
- 注意力散漫の影響で、物をなくしたり物を忘れたりする。
ADHDにおける「不注意」の原因は、ワーキングメモリの障害にあるという説もあります。ワーキングメモリとは、瞬間的かつ一時的な記憶力のことです。
記憶力との関係
ADHDの各種症状のうち「不注意」が強く現われている人には、よく物忘れが見られます。記憶したものが脳から消滅するのではなく、注意力が弱いため、そもそも記憶するに至っていない、という順番と思われます。注意力を喚起する訓練、または治療を受けることにより、物忘れが少なくなるかも知れません。
ADHDにおける「多動性」と記憶力
核となる症状
- 無意識に体が動いてしまう。動いた体を自分で制御できない。
- 無意識でしゃべり続けてしまう。しゃべることを抑制することができない。
意図せずして、つい体や口が動いてしまいます。動いていないと落ち着かず、かつ、動くことを抑えることも難しいとされています。成長とともに症状は低下していくのが一般的。
記憶力との関係
記憶とは、言わば自分以外の外界の情報を自分の中に取り入れる行為。よって物事を記憶するためには、その物事に対して受動的な姿勢も必要となります。「多動性」が強く出るタイプのADHDの場合、能動性に対して受動性の比率が低いため、ともすると記憶することが苦手となる可能性もあるでしょう。
ADHDにおける「衝動性」と記憶力
核となる症状
- 自分の感情を抑えることができない。
- 空気を読んで発言や行動を抑えることができない。
思いついた言動が場に適切であるかどうかを考えず、言動が先走ってしまう状態です。いったん立ち止まって考えることが苦手で、かつ、言動を途中で抑えるためのブレーキを効かせることも苦手です。
記憶力との関係
「衝動性」もまた「多動性」と同様、物事に対する受動的な姿勢が弱いと考えられます。結果、記憶力に不都合が生じてしまうことも考えられるでしょう。